花京院と承太郎は小学校からの幼馴染で、ずっと一緒に遊んでいた。中学に上がってもそれは変わらず、遊ぶ場所が公園からゲームセンターに変わったくらいでたまに花京院の部屋でゲームをしたり承太郎の部屋で読書に勤しんだりもした。二人は他に友人がいないわけでもなく、どちらかといえば周りから好かれていたのだが、基本的にはお互いとだけ遊んだ。花京院は寡黙な割に面白いことを言う承太郎が好きだったし、承太郎も饒舌だが煩わしさがまったくない花京院は一緒にいて気が楽な相手だった。
高校に入ってしばらく経った頃、承太郎に彼女ができたと聞いた花京院はものすごく嫌な気持ちになった。理由はよくわからないが、とにかく胸の中がドス黒くなり無性に苛々した。しかし承太郎が真剣に相手のことを好いているというのが伝わってきたので、花京院は笑顔でおめでとう、今度ぼくにも紹介してねと言った。数日後に紹介された相手は控え目な美人でおとなしい大和撫子のような子だったので、いかにも承太郎が好きそうなタイプだなと花京院は思った。二人を見ていると言動からお互いを真剣に好きあっているということが感じられて花京院はまた嫌な気持ちになる。どうして?おめでたいことじゃないか。一体なにがそんなに気に食わない。
自分に問いかけてみても答えはまったく見えず、穏やかに会話をする二人にただ苛々するばかりだった。
大学に入ってからも承太郎は彼女と交際を続けていた。花京院は相変わらず正体のわからないドス黒い気持ちを持っていたが、それを『一番の親友を取られたから』だと思うことにした。小学生の時からずっと一緒にいる承太郎を取られて悔しいのだと。もういい年なのだからそんな幼稚な考えは捨てろと散々思っているのだが、モヤモヤとした気持ちはいつまで経っても消えないので、花京院は諦めた。それに『親友を取られて悔しい』という理由があれば苛立つ自分を「そんなことくらいで」と諫めることができたので、花京院は無理やり嫌な気持ちを隅に追いやっていた。
数年後、承太郎の結婚式に参加した花京院は、腕を組んで歩く二人を見て分かったことがあった。それは花京院が高校生の時からずっと考えていたことだった。
皆に祝福されて幸せそうに笑う新婦と、その隣で控え目に微笑む承太郎は今世界で一番幸せなふたりなんだろう。晴天に恵まれた今日という日にふたりは永遠の愛を誓うのだと思うと、花京院は困ったように笑うことしかできなかった。気付くのが遅すぎたのかもしれないが、早く気付いていたところで結果は変わらなかったかもしれない。きっと理由をつけて諦めたあの時にもう終わっていたのだ。花京院は微笑みながら「承太郎」と名前を呼ぶ。顔を上げた承太郎は、もう花京院の知っている承太郎ではなかった。
「君のことが好きだよ」
花京院の言葉に、承太郎は小さく笑って「俺もお前のことが好きだぜ」と言った。「結婚してもたまには遊んでくれよ」「ああ。一番に家に招待してやる」「はは、楽しみだなぁ」いくつかの会話の後、承太郎は他の友人に呼ばれてそちらへ行ってしまった。花京院は微笑んだまま持っていたシャンパングラスに口をつける。
本当は
愛していたよと言ってやりたかったのだけど、空があんまり青いので意地悪をするのはやめた。
ここでお別れ
(20110413)
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